また買い手となった企業の業種を比較すると、約6割が「建設・土木業」の企業で、小規模・中規模の事業者が大企業に買収され、建設・土木業界の中での業界再編が活発に行われていることがわかりました。買収の対象となった「建設・土木業」の企業を従業員数別に比較すると、従業員数が不明の企業を除いた全16社の中では、25.0%が従業員20名以下の小規模事業者、62.5%が21名超300名以下の中小企業となっています。

「建設・土木業」におけるM&A件数が増えている要因として、新型コロナの影響による工事の延期や中止、東京五輪開催に向けて増加していた工事の減少、建設業界における人手不足の顕在化が考えられます。新型コロナによる消費減退により、新店舗オープンなど新規工事案件が次々に中止や延期になり、小規模の企業の事業環境が悪化しています。2021年2月の東京商工リサーチの発表によると建設業のコロナ関連倒産数が増加傾向にあることがわかっています。また東京五輪に向けて建設中であった物件が次々と完工し、国内の工事案件数が減少していることも挙げられます。
また、厚生労働省が発表した「労働経済動向調査(2020 年8月)の概況」によると、全産業のうち、建設業の人材不足が最も深刻化していることがわかっています。国土交通省発表の「建設産業の現状と課題」では、2016年時点での建設業就業者は、55歳以上が約34%、29歳以下が約11%と、高齢化と若年層の参入率の低さが著しいことがわかります。
こうした状況下で、売り手側では新型コロナ禍での経営状態の改善や採算の改善などを目的に、買い手側では人材獲得や全国へのエリア拡大などを目的としたM&Aが増加している可能性が高いと窺えます。